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 部屋に帰ってくるなり、俊介は慎吾を抱きしめる。

署の駐車場でまちあわせて、顔を見るなりほっとして、部屋に入るなり溢れる感情を抑えきれずに抱きしめた。

「また、何かあったな?」

「いえ、判ったんです。僕が今までどんなに先輩に迷惑かけていたか・・・自分の想いだけ一方的に押し付けて・・・」

「誰だ?課長と、金本や伊藤は違うとして・・・誰がお前にちょっかい出してるんだ?」

「違いますよ」

「違わないだろう?そういうことされて、嫌な思いして、自分を振り替えって反省してるんだろ?」

慎吾の見解は正しい、しかし、飯田秀彰の事まで話して変に誤解されたくない。

「お前みたいな綺麗な奴は、スレた奴に狙われる。自分が汚れていればいるほど、綺麗な奴を汚したくなるんだ。判ってた事だ」

「飯田は確かに浮世慣れしてますけど、そこまでじゃないですよ・・」

「飯田?」

あ・・・・結局、白状してしまった・・・

「新米です、今日から僕と組んでるんですが・・」

「判った、チェックしておく。署長室にデーターあるからな。」

しかし・・・張り込みは動く密室に二人きり・・・心配でないはずは無い。

「そんなに、僕モテないから・・・いままでそんな事なかったし、多分、思い過ごしですよ」

「今までと今は違うぞ?判る奴には判る。微妙にフェロモン出まくりな自覚ないのか?」

そんな・・・

「まあ、いいか。それはそうと、こういう体制になってるんだから、寝室に行こう」

「夕食は?」

「メシよりお前が食いたい。昨夜は中途半端に終わったし、スッキリしないんだ。お前はもっと、スッキリしてないと思うけど?」

思い出そうとする事自体が無駄な努力、判っていても思い出したい俊介だった。

「せめて、シャワーさせてください」

「じゃあ、時間短縮のために、一緒に・・」

「それは・・・また今度に・・」

「そうか?じゃあ、酔っ払った時にでも・・」

慎吾さん・・・もう酔っ払うまいと硬く心に誓った。

 

 

洗い髪を乾かすと俊介はバスロープを羽織り、寝室に向かう。

「慎吾さんのだから、これ、ぶかぶかですよ・・・」

今にも脱げそうなくらい大きい。

「贅沢言うな。お前にそれ貸したから俺は・・・」

「え?慎吾さん・・・もしかして全裸?」

シーツをかけてベッドで上半身起こして座っている慎吾に俊介は固まる。

「パジャマ着るのか?シャワーするのに脱いで、また着て?どうせ脱ぐんだぞ?」

そういう発想・・・

「お前は全裸無理だから、バスローブ貸してやったんじゃないか。半脱ぎ状態を楽しみたいと言う事もあるけど。」

え・・・・ため息と共に、俊介もベッドに入って慎吾の横に正座して、慎吾の髪に手をやる。

「慎吾さん、髪、半乾きですよ?ちゃんと乾かさないと・・・」

「俺、ハネないから、大丈夫」

かなり大急ぎなのが手にとるように判る。

「ところで・・・・」

朝、チラッと見た、はしかモドキの斑点に視線を落とす。

「どうやったら、こんなになるんですか?酷いなあ」

「お前だぞ?やったのは。何かとり憑いたのかと思ったぞ?」

酔っ払ったからと、経験の無い事が出来るのかどうかは謎だった。

「淫乱な霊でも、とり憑いたんですかねえ・・・お祓いに行ったほうがいいですか?」

さあ・・・でもこのままでも面白いと思ってしまう慎吾だった。

「俺がお祓いしてやるから。欲求不満が満たされたら、きっと成仏して出て行くから」

あまり信憑性の無い慎吾の言葉に、俊介は苦笑して、俊介は慎吾の胸に触れる。

慎吾に内出血の痕をつけた事は俊介自身、ショックだった。

「俺はこれくらい、すぐ消えるけど、お前だったら薄く痣が残るだろうな・・・」

そういいつつ、俊介の眼鏡を外して、スタンドの横に置く

「そういえば、膝とか、すりむいた痕、完全に消えないんですよねえ・・・」

「他の奴に痣、つけられる前で良かった。綺麗なものは綺麗なまま鑑賞するのがいい」

首筋に唇を寄せて慎吾はそう言う。

「それに、お前は触れるか触れないくらいの刺激が一番感じるんだ。」

(すでに知り尽くしたような事言うなあ・・・)

多分、慎吾は、俊介自身より、俊介の身体に詳しいだろうと思われた。

こうなってから俊介は、新しい自分自身を慎吾の中に見つける。

認めることに少し、恐れを感じるけれど、それでも不快ではない。

少しずつ身体をずらしつつ、俊介は横たわる。

今日一日、とても長い気がした。慎吾に逢いたくてたまらなかった。

逢って、確かめたかった。愛されている事を。

全身で、身体の奥で。

何故、飯田の出現くらいでこんなに不安になるのかはわからない。でも、不安が消えない。

「お前に限って、迷惑なんか無いんだぞ?好きな奴に襲われるのは悪い気がしない。つーか、もっと求められたい気がしてたからな」

愛情表現とセクハラは紙一重・・・

「しらふじゃない事が残念だけど。普段もアレだけ情熱的ならいいんだけど?」

だから・・・何をしたんでしょう・・・僕は・・

「最初から好きでどうしょうもなくて困ったけど、不快な思いはしてないから。」

身体を密着させて抱き合うだけでも安心する。

この温床からは、逃れられそうにない。

「甘えていいんだぞ?お前、甘えて来なかったんだろう・・・」

俊介の髪を掻き上げて、慎吾は微笑む

父が俊介をベタベタに甘やかす理由が判った気がする。

父親の不在、自分は長男・・・母親を支えようと頑張ってきたのだろう。

「酔っ払うと甘えたい願望と、独占欲と欲求不満が表面化するんじゃないか?」

え?半信半疑な俊介のバスローブを解き、下腹部に手を滑らせる。

「自分でやったりとかしてないだろ?」

「全然しないわけじゃあ・・・」

「罪悪感を感じて、禁欲生活してた皺寄せが酔っ払って出てきたとか?」

話にもならない・・・しょっぱい顔をする俊介。

「頭が良すぎて色々考える奴は大変だよな。ナンパで男ひっかけてきた俺が偉そうに言える義理じゃないけど」

そんな事をしても、心は満たされる事もなかったが、あまり深く考えないように生きてきた。

「少しの刺激で過激な反応見せてるし、かなり溜まってるぞ・・・」

自分の思い通りにならない、欲望の塊を俊介はもてあます。

「欲しいときは欲しがっていいんだぞ?ただし、俺だけにしろよ」

そう言って、慎吾の顔が俊介の腰に降りてゆく

「ちょっ・・・慎吾さん、何するんですか?、辞めてください」

肩をつかまれて、本気で拒否された。

「あ、ダメなんだ?昨夜は俺にしてくれたのに・・・するのはいいけど、されるの嫌なのか?」

口調がどこか意地悪だった。

「昨夜・・・」

とんでもない事をしてしまったようだと、俊介は途方にくれる。

「何の躊躇いも無くごっくんされて、俺の方が焦ったよ?」

え?半泣きになっている俊介。

「やはり、悪い霊が取り付いてます・・・」

「してやっても、俺、あんまりされた事無かったから、感動したなあ・・・またしてくれる?」

どんな羞恥プレイなんだ・・・楽しんでいる慎吾が恨めしい。

「と、まあ・・・本気で嫌がってることは無理強いしないから安心しろ」

と、頭を撫でてくる慎吾に、もう何も言えなくなる。

アメとムチで飼育されている気がしてならない。

「手でしてやるから・・・」

アメとムチは続く・・・・

 

 

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