15

 

 

いつもの時間に、俊介は目覚めた。

(朝ごはん作らなきゃ・・・)

むっくり起きあがるとパジャマを探す・・・

ぐいー

いきなり腕を掴まれて再び横になる。

「今日は非番だから、ゆっくり寝てろ」

「でも・・」

ぎゅっー慎吾に抱きしめられた。

「昨日の今日なのに・・・お前、タフだな・・」

ええっ・・・

「最初は結構大変なんじゃないのか・・」

「平気ですよ・・・」

「じゃ、毎日平気?」

「ええと・・・・・・」

あちこち力を入れすぎて、体中バキバキになっている俊介はため息をつく。

「辛かったら、無理にとは言わないけど?」

「辛くは無いですけど・・・」

と、俊介も慎吾の背に腕をまわして抱きしめる。

「緊張とか、ぎこちなさは、そのうち無くなりますか?」

「俺は、そういう初々しいの好きだけど?変に慣れると刺激が無いし」

そう言いつつ、俊介の顎に手を当て持ち上げてくちづける。

「それとも、慣れて誘ってくれたら、もっといいかな」

慎吾さん・・・・苦笑するしかない俊介・・・

「冗談はそれくらいにして、今日はどうする?」

「そうですねえ・・・ごろごろしているわけにもいきませんし・・・」

お互い、非番の日は別行動していたので、こういう時は困る。

「でも、しばらく横になってろ。」

「大丈夫ですよ〜大げさだなあ」

「じゃあ朝からで、なんだけど、もう一回・・・」

 「すみません、まだ・・・明るいのは苦手です・・・」

まあ、そうだろうなあ・・・慎吾は頷く。

非番で無ければ慌しく出勤していただろう。とりあえず、今日は まったりしていられる事に感謝する。

「でも、案外、平気そうだったけど?」

「ええ、こう見えてもタフですよ〜僕、胃カメラだって呑むの上手なんです」

何で、胃カメラがそこで出る?

慎吾は俊介の発想についてゆけない。と言うか、その歳で胃カメラとは・・・・

「でも、それは上の口だろう?」

「下に口なんかついてな・・・あっ・・」

気付くのが遅すぎな天然ぶりも、可愛くてしょうがない。

「なんにしても、呑み込むのは上手いんだ〜よしよし。」

「慎吾さんキャラが変わってませんか?」

「いや、俺、ベッドではこういうキャラなんだ。」

へえ・・・俊介のあどけない表情が、笑いを誘う。

(マジに受け取るから、面白いなあ・・・)

「じゃあ、今度は胃カメラの成果、見せてもらおうか。上の口で」

「ああ・・・はい」

なんとなく返事をしたものの、意味が判らず黙り込む。

(絶対判ってねえな・・・こいつ)

笑いをこらえるのに必死な慎吾を、俊介は怪訝な顔で見る。

「何か、変なこと言いましたか?」

「いや・・・期待してるよ」

はい・・・曖昧に返事をしつつ、胃カメラを呑む決意をしたりしている俊介の首筋に、慎吾の唇が這い回る。

「慎吾さん?」

「やっぱ、お前可愛すぎて駄目だ・・」

駄目って・・・え?

うつぶせにされて、今度は背中を唇が這い回る。

「ちょ・・・」

脇から前にまわされた腕が胸元をまさぐる。

突然、何が起こったのかパニック状態の俊介に、慎吾は笑顔で言う。

「嫌なら辞めるけど?」

(今さら何を・・・この確信犯・・・)

背筋に沿って降りてくる唇、腕は胸元から下腹部へ進出を始める。

「はぁっ・・・」

こらえていた息が俊介から漏れる。それが自らの羞恥心を煽る。

「なあ・・・いいだろ?もう、ここがこんなになってるぞ?」

すでに反応している身体の一部を慎吾は手のひらに包み込む。

「もう、好きにしてください」

こんな状態では降服するしかない。なんとなく口惜しさを感じつつ、俊介は唇を噛む。

俊介よりも、俊介自身を知り尽くしている慎吾の手が巧みにうごめき、俊介を翻弄する。

頂点に達するまで、そう時間はかからなかった。

「っはぁっ・・・」

詰まらせた息を吐いて身をよじる俊介に、慎吾はため息をつく。

「強情な奴だな・・声出していいんだぞ?」

そう言いつつ、手は後ろを攻め始める、昨夜、慎吾を受け入れた部分を執拗に指が這い回る。

しかし、核心には届かない。じらされて俊介は身をよじる。

「欲しかったら、言え。昨日教えてやっただろう?」

「そんなこと・・・」

顔が火照る。顔を見られていない事だけが唯一の救いだった。

ゆっくり、ゆっくりと中に進む指先が微妙な動きを見せると、俊介は最後の砦を空け渡す。

「早く・・ください」

「何をだ?」

「慎吾さんの・・・」

(これは儀式だよ・・・俊介。お前は自分の壁を壊さなければならない。男が必死で守ってきた砦を空け渡すんだ

誰にでもではない、俺だけに。そうして一つになったとき、俺は完全にお前のものになる・・・)

俊介を強く抱きしめた後、慎吾は俊介の腰を抱えて引き寄せる。

「俺のすべてをやるよ」

注意深く、俊介の中に自らを沈めると、ゆっくり動き始めた。

自分のすべてが、俊介の中に飲み込まれるような錯覚に陥る。

こんな、侵食される歓びは、今まで通じてきた他の誰にも感じた事は無かった。

本当に愛している実感を初めて感じ、本当に愛されている実感を初めて感じた・・・昨夜も今も・・

戸惑いながらも、すべてを委ねようとする俊介が愛しい。

慎吾は、自分を受け入れる事に全身全霊を傾けている愛しい人を抱きしめた。

あっと呻いて俊介が崩れ落ちるのと、慎吾が達するのは同時だった。

「痛むか?」

慎吾は俊介をかき抱いてそうささやく。

砦を空け渡す事は痛みを伴う。しかし、その代価として愛する人を独占できるのだ。

「いいえ、貴方は優しいから・・」

俊介は微笑む。

「でも、妬けますねえ。凄く慣れてて・・こういう事、一体何人にしたんですか?」

「それ、褒め言葉?そんなによかったか?」

「知りませんよ」

すねる俊介の髪をかきあげて、慎吾は笑う。

「こんな風に抱いたのは、お前が初めてだって・・・信じるか?」

「信じますよ、貴方の言葉は。たとえ嘘でも・・・」

たとえ嘘でも・・は余計だろう?眉間に皺を寄せる慎吾だった・・・・

 

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