20万HIT 御礼記念SS  

 

        月下美人

(ぼん・・・)

伊吹は、自分に抱きついて眠る龍之介に困っていた。

高校生になっても、伊吹のベッドに夜毎、もぐりこんでは眠る鬼頭組の跡取り息子・・・

大きな瞳は閉じられて、長いまつげが目の下に影を作る。

陽に焼ける事のない白い肌は、夜に咲く月下美人のように闇を照らす。

かすかに開いた紅い唇、白い首筋、パジャマの襟から胸元が垣間見える。

どうして、実の弟のように面倒を見てきた少年に、こんな想いを抱くのか判らない。

でも、これは事実だ。

龍之介の母、紗枝の遺言で伊吹は龍之介の母代わりを務めた。

誰よりも 何よりも慈しんできた・・・・

が・・・・

いつしか愛しさの種類が変わった。

添い寝して平常心でいられないーこの事は、ある意味、危険をはらんでいる。

組の誰も、こんな彼の葛藤を知らないだろう。

龍之介の父の哲三さえ・・・・

龍之介は・・・龍之介も知らない。知っていたら、こんなに無防備な態度はとらないはずだ。

気づかれてはならない。気づかれたらすべてが終わる。

龍之介に嫌われるかもしれない。

ーもう高校生なんやから、一人で寝てくださいー

そう言う度に 大きな瞳をうるうるさせて、悲しげにうつむく龍之介は、学校では優等生の生徒会長。

家では甘えん坊・・・

結局、ほだされて許してしまう。

触れたら、一瞬でこの花は散ってしまうだろう。

龍之介を傷つけることも、泣かせる事も許せない。万が一、自分がそんな事をしたとしたら・・・・

(一人相撲の道化やな・・・)

ため息は闇に消えてゆく・・・・・・・

「伊吹・・・」

龍之介の声で、伊吹はまどろみから覚めた。

「ああ・・・夢見てました・・・龍さんが高校生の時の・・・」

夢と同じように、龍之介はベッドで、伊吹の隣に横たわっている。

大きな瞳は変わらないが、今では伊吹を包めるくらいに成長した体躯、たおやかではあるが、儚げではない。

彼は、もう少年ではなく、男になっていた。

「あの頃は、ようお前のベッドにもぐりこんだな・・・」

「蛇の生殺しでしたよ・・・」

はあ?

「正直、一睡もできませんでした」

その隣で、熟睡していた自分・・・龍之介は苦笑する。

「食いたかったか?」

露骨な言い方に、イエスともノーとも言えない伊吹・・・

「まだ高校生の貴方に、邪な思いを持ったことは認めます」

「食ってもよかったのに・・・・お前、あれは据え膳やったって、気づかんかったんか?」

え?・・・・言葉も出てこない。

「俺もあの時は、お前を襲う術を知らん、おぼこいへタレやったから。つーか、誘っても

拒否られたよな?大学生の時・・・・」

その時の事を まだ根に持っている龍之介に、伊吹は言葉を失う。

「私がどれだけ葛藤してたかも知らんと、よくも・・・」

だから・・・と龍之介は伊吹にのしかかる。

「据え膳を前に、お前が一人で悶々してるのまで、俺の責任か?」

「貴方が、大切ですから・・・・」

龍之介を見上げて、伊吹はその頬に触れる。

「俺は、ずっと、これを望んでたのに・・・」

伊吹に馬乗りになったまま、龍之介が自らのバスローブをはだけると、夢の中の龍之介と変わらない

白い肌が闇に浮かび上がる。

月下美人・・・・夜に咲く花・・・・

人知れず、自分だけのためにそれは、夜毎に咲いた。

「さすがに、誘い方はあの頃より、強烈になりましたね・・・」

「誘ってない・・・これは襲ってるんや・・・」

瞬時に唇は重ねられる。

ただ、力任せに抱きついてきた19歳の龍之介は、今では愛を交わす余裕を身につけていつの間にか

主導権を握っている・・・・

「大きゅうなりましたねえ・・・ぼん・・・」

「ぼん言うな・・・」

「組長・・・」

「おい!」

遊ばれて怒り出す龍之介を見て、大爆笑の伊吹・・・・

「ほんまに、夢のようです。あの頃は貴方と、こうなれるとは思ってもみませんでしたから・・・。」

「俺の人生計画には、ちゃんとあったぞ?」

ははははは・・・・思わず笑いが漏れる。

「私は、狙われてたんですか・・・。」

ああ・・・龍之介も笑う。

龍之介の首筋から胸元へ指を滑らせながら、伊吹は微笑む。

「ずっと、私だけのために咲いてください・・・そのためなら、私は命を捧げます。」

「捧げるな・・・そんなもの。お前の命などいらん。」

一度、伊吹を亡くしかけた・・・あんな思いは二度としたくない。

「捧げるのは身体で充分やし・・・つーか・・・2回戦はじめるぞ」

ただ、一人のためだけに咲く花になりたかった・・・・散ることなく、夜毎に咲き続けていたかった。

背にまわされた伊吹の腕に、龍之介は永遠を願う。

19歳の初夜から、願い続けた唯一つの願い・・・

「貴方は、私だけのために咲いていて下さい」

「お前がおらんと、俺は枯れてしまう・・・・」

「枯らすもんですか・・・貴方は永遠に咲く、月下美人ですから。」

ああ・・・

うなづいて龍之介は伊吹の肩口に唇を落とした。

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あと(あ)がき

20万御礼記念SS

 匿名^^様のリクエストで

風シリーズの原点の二人 
時代はいつでも。むし暑さが飛ぶくらいの、いちゃいちゃお話  でした

暑さは飛びましたか? 余計暑苦しいんじやないかと心配です

いちゃいちゃといえば ぼん時代の龍之介が思い浮かびますが 私的には親父時代のいちゃいちゃも健在ですと

言いたいので、回想とのリンクで一粒で二度おいしい にしてみました

今では りっぱな襲い受けな龍ですww

ここまできたらもう、永遠にいちゃいちゃしといてもらいましょうか・・・

優希もあきれるくらいに・・・

今回リクエスト募集しての初の試みでした 

実は、リク来なくて自然消滅・・・・が怖くて、今までキリ番企画さえできずにいました.

今回リクくださいました方々にお礼を申し上げます。先着様に決定しましたが、

次、この勢いで 222222HIT ぞろ目企画いたします。ゲッター様のリクエストお待ちしております。

では、これに懲りず、末永くお付き合いのほどを・・・・・

                                   夕月斗織 拝


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